手術日+533日目 2025/8/14(木)(切迫骨折)

午前の病院での仕事と大腿骨切迫骨折の患者

今朝は薄曇りでした. 昨晩も涼しくて, 窓を開けて, 扇風機なしで寝ました. 朝も25 ℃ありませんでした.

外に出ると, 爽やかさも感じ, 夏が終わりに近づいている感じがしました.

通常通りに出勤しました. 今日も道路は空いていて, いつもの半分くらいの時間で病院に到着しました.

8時前に病棟に上がって, 昨日後輩医師の執刀で手術が行われた患者さん2人(変形性膝関節症の中高年に対する脛骨近位骨切り術, 肘関節の離断性骨軟骨炎の高校生に対する軟骨移植術)の経過を確認しました. お二人とも問題なく経過されていました.

後輩医師が夏休みのため, 8時から独りで朝の病棟回診を行いました.

8時半に外来に降りて, 26人の患者さんの診療を行いました. 新規の患者さんが3人いらっしゃいました. そのうちの一人は, 大腿骨骨腫瘍が疑われて, 先輩医師の整形外科クリニックから紹介されてこられた中高年の患者さんでした.

腎癌が大腿骨の転子下に転移して, 手術治療が行われた事例のX線写真.
腎癌が骨に転移すると, 骨が溶けて, 黒く透けて見えるようになります(左上).

引用元:Jiang W. Progression of femoral osteolytic metastases after intramedullary nailing and subsequent salvage techniques. Cancers (Basel) 2024. 16.

ふとももの痛みのために, 歩くのが困難で, 両手で杖をついて診察室に入ってこられました. 持参された大腿骨のX線写真を見たところ, 大腿骨の転子下という部分の骨が溶けて, 透けていました. すぐに癌の骨転移を疑いました. 紹介状の既往歴には, 特記すべきことなしと書かれていましたが, これまで手術したことがないかと聞いたところ, 3年前に他の病院で腎臓腫瘍と診断され, 腎臓を摘出したとのことでした. 「腎臓の腫瘍は癌だったのですか」と単刀直入に聞いたところ, 「癌でした」との答えでした. 既往歴から, 腎癌の骨転移と診断しました.

大腿骨のX線写真からは, もうすぐにも骨折しそうな状態と判断しました. 骨強度の著しい低下によって病的骨折(荷重や打撲といった通常では骨折しないようなわずかな外力によって骨折すること)を起こしそうな状態を切迫骨折といいます.

腕や脚の骨(長管骨)の切迫骨折の判定には, Mirels scoreが使われます.

スコアは, 部位(Site), 疼痛(Pain), 骨転移型(Lesion), 大きさ(Size)の4項目について, 評価します.
部位は, 上肢(Upper limb)だと1点, 下肢(Lower limb)だと2点, 大腿骨転子部周辺(Peritrochanter)だと3点となります.
疼痛は, 軽度(Mild)だと1点, 中等度(Moderate)だと2点, 重度(Functional)だと3点となります.
骨転移型は, 造骨型(Blastic)だと1点, 混合型(Mixed)だと2点, 溶骨型(Lytic)だと3点となります.
大きさは, 骨の横径に対する須要の最大径であり 1/3未満だと1点, 1/3以上2/3以下だと2点, 2/3を超えると3点となります.
morels scoreと骨折の可能性の関係.
7点以下では骨折の危険性は4 %以下と低いですが, 8点だと15 %に増加し, 9点だと33 %と急に増加します.
9点以上は, 切迫骨折と診断されます.

引用元:Mirels H. Metastatic disease in long bones. A proposed scoring system for diagnosing impending pathologic fractures. Clin Orthop Relat Res. 1989. 249.

この患者さんの場合, Mirels scoreは, SiteがPeritrochanterで3点, PainがFunctionalで3点, LesionがLyticで3点, Sizeが2/3以上で3点で, 12点満点となり, いつ骨折してもおかしくない状態でした.

他の部位にも転移があるかどうかを調べるために, 全身の造影CTを, 大腿骨の中の転移病変の拡がりを確認するために, MRIを撮像するようにオーダーしました.

CTの結果, 腎癌が摘出された部位(後腹膜)には, 腎癌の再発やリンパ節転移の所見はありませんでした. その他, 肺への転移や他の骨への転移も認められませんでした. 腎癌では, しばしば体の中で1カ所の骨だけに転移することがあります. MRIの結果, 転移した腫瘍は骨の中にとどまっていて, 切り取ることが可能と判断しました.腎癌が体のどこか1カ所の骨に転移した場合は, 病巣を切り取ることで治すことが可能となる可能性があります. 治療方針としては, 癌が転移した大腿骨の患部を切り取って, 骨が無くなった部分を自分の骨(自家骨), 他人の骨(同種骨), あるいは金属製の補綴物(人工骨幹, 腫瘍用人工骨頭など)に取り換える手術で治療することになります.

まずは, 足をついて体重をかけないように松葉杖を使って歩く練習を理学療法士の指導の下に行っていただくことにしました. 聞いたところ, おうちが2階にあるので, 松葉杖で階段の上り下りも練習するように依頼しました. 松葉杖で移動できないようであれば, 病的骨折を予防するために, 今日から入院していただくと説明しました.

患者さんがリハビリ室で練習している間, 13時半過ぎに自分の部屋に戻ってランチを摂りました.

午後の病院での仕事

14時に外来に戻りました. 腎癌の骨転移の患者さんに松葉杖が使えそうかどうか確認したところ, 使えたとのことだったので, 帰宅していただくことにしました. 来週, 大学病院の整形外科外来を受診できるように, 後輩医師にラインで連絡して, 予約を取得しました.

14時から4人の患者さんの診療を行いました.

14時前に東京から硬式野球の遠征で来られた高校生が, 打球を膝に受けてから痛くて歩けなくなったとのことで, 受診されました. X線写真の結果, 骨折はなかったので, 鎮痛薬を処方しました.

15時から大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折の患者さん2人に手術の説明を行いました.

16時半から独りで夕方の病棟回診を行いました. 入院患者さんは79人, 自分が主治医となっているのは36人に減りました.

17時半に病院を出ました. 晴れていましたが, 暑さはやはり和らいでおり, 30 ℃くらいでした.

休息日

今日は, トレーニングは行わず, 休息日にしました.

18時過ぎから風呂の掃除を行いました. 天井の浴室乾燥機を分解して, フィルターのほこりを取り除いた後, スリットなどのカビをカビキラーで落としました.

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