手術日+622日目 2025/11/11(火)(Geodeジオード)

午前の病院での仕事と肩腱板石灰性腱炎の患者

昨晩の雨が上がり, 朝は一面の青空.
遠くの山々はうっすら雪化粧し, 冬の気配を感じさせる光景でした.

8時から後輩医師と病棟回診.
昨日手術した患者さんたちはいずれも順調に経過されており, 上腕部脂肪腫の患者さんは本日午後に退院予定となりました.

9時からは, 実習に来た大学医学部の学生さんへガイダンスとミニ講義.
9時半前に外来に降りて, 午前は30人の患者さんを診療しました.

肩腱板の石灰性腱炎のX線写真とGärtner分類.

引用元:Witte PB. Radiological and clinical predictors of long-term outcome in rotator cuff calcific tendinitis. Eur Radiol. 2016. 26.

受付終了間際に来院された中高年男性は, 「昨日から急に肩が痛くなって動かせない」とのこと.
診察では肩関節を全然動かせず, 大結節部に強い圧痛を認めました.
石灰性腱炎を疑ってX線を撮影すると, 腱板付着部に白く濃い石灰沈着像を確認.

「消炎鎮痛薬を処方して, 改善しないときは注射します」と説明したところ, 「今日, 注射してほしい」との強いご希望.
「かなり痛いですよ」と説明した上で, 局所麻酔薬『キシロカイン』とステロイド注射薬『デキサート』の混合液を石灰沈着部に注入.
太めの針で石灰を吸引・分散させながら何度か穿刺しました.
施行中は痛みがありましたが, 終了後には肩を動かせるようになり, 笑顔で「嘘みたいに楽になりました」と感謝されました.

午後の病院での仕事と脛骨geodeの患者

変形性膝関節症に合併した大腿骨内顆のgodeのCT.
境界明瞭な空洞が骨内に形成されています.

引用元:Wang J. Medial compartment osteoarthritis with a large subchondral geode of medial femoral condyle treated with unicondylar knee arthroplasty: A case report. Annals Clini Med Case Rep. 2022. 9.

昼食を終え, 14時に外来へ戻って6人の診療.
その中の一人は, 脛骨の骨腫瘍を疑われて紹介された中高年の患者さんでした.
紹介元のMRIを確認すると, 変形性膝関節症に合併した骨内嚢腫(geode(ジオード):正式な日本語名はありりません)が疑われました.

骨巨細胞腫や軟骨性腫瘍を否定するために, 造影MRIを追加撮影することにしました.

Geodeジオードとは

アメジストのgeode.

『Geode(ジオード)』とは, もともと地質学の用語で, 鉱物標本内の丸い空洞(ガスの袋) を指します.
鉱物の内壁にアメジストの結晶がびっしりと並び, その美しい断面を見たことがある方も多いでしょう(上図).

医学領域では, この言葉が転じて, 関節軟骨下骨(subchondral bone)に接して形成される骨内の空洞性病変 を指す際にも用いられます.
レントゲン写真やCTでは透けて見える円形または楕円形の『空洞』として観察されます.

この病変には 『軟骨下嚢腫(subchondral cyst)』という表現も使われますが, 両者には厳密な違いがあります.
『Cyst(嚢腫)』 は液体成分を含む病変を指すのに対し, 『geode』は液体を含まない場合もあるため,
『cyst』と呼ぶのは正確ではありません.

Geodeは以下のような慢性関節疾患でみられます:

  • 変形性関節症(Osteoarthritis)
  • 関節リウマチ(Rheumatoid arthritis)
  • 偽痛風(Pseudogout)
  • 骨壊死(Osteonecrosis)

『Geode』の形成のメカニズムにはいくつかの説があります.

  1. 関節液侵入説
     関節内圧の上昇によって, 関節液が軟骨を通って軟骨下骨へ入り込み, その部位に液体が貯留して空洞化するという説.
  2. 骨壊死説
     軟骨下骨が微小骨折を起こした後, 骨壊死を生じて空洞を形成するという説.

いずれの場合も, 関節の慢性的なストレスや炎症が背景にあり, その結果として骨内に『地質学的な空洞=geode』が出現すると考えられています.

上腕骨頚部骨折の急患

15時過ぎには救急隊からの連絡.
「階段から転落し, 頭部を打撲, まぶたを裂創, 肩の痛みを訴える後期高齢女性」との搬送依頼でした.
脳外科で受け入れ可能だったため, 受けることにしました.

16時過ぎに受診. 昼から飲酒していたとのことで, 酔ったまま階段を踏み外したとのこと.
上腕骨近位部を圧すると強い痛みがあり, X線で上腕骨頚部骨折を確認.
幸い転位は軽度だったため, 三角巾で固定し, 後輩のクリニックへ紹介しました.

17時前, 造影MRIを終えた膝の患者さんの画像を確認.
病変内部に造影効果が認められず, やはりgeodeと判断.
紹介元へ返書を書いて, 午後の業務をやっと終えました.

今日も外来対応が長引いたため, 夕方の病棟回診は後輩医師にお願いし, 17時半過ぎに病院を出ました.

トレーニング

帰宅後、エアロバイクで約1時間.
今日のメニューはVO₂maxインターバル(4分×4本).
最大心拍数150回/分を超えるハードな内容でしたが, 最後までやり切りました.

入浴後, 体組成計に載ると筋肉量が増加しており, トレーニング効果を実感.
以前はキツかったスクワットも100回は余裕でこなせるようになっています.

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