手術日+571日目 2025/9/21(日)(熊野本宮大社)

朝の精進料理

夜明けとともに鐘の音が響く中, ようやく目を覚ましたのは7時過ぎ.
宿坊では6時から朝のお勤めがありましたが, 残念ながら間に合いませんでした.

宿坊の朝食.

7時半, 静謐な空気に包まれたお座敷で精進料理の朝食をいただきました.
一品ごとに宿坊の女性スタッフが丁寧に説明してくださり, 手を合わせてから箸を取りました.
味噌汁の香りが心地よく, 野菜の滋味が身体に染み渡るようでした.

8時半, 宿坊を後にし, 高野山を下りました。

道の駅 青洲の里

本日の目的地は熊野の山々でしたが, 医師としてどうしても立ち寄りたかった場所がありました.
それが世界で初めて全身麻酔下手術に成功した和歌山の外科医『華岡青洲』先生が開いた医学校兼診療所『春林軒』です.

道の駅 青洲の里.

高野山から車で約1時間.
道の駅 青洲の里』に到着すると, 下界はすでに30℃近い暑さ.
春林軒の開館まで時間があったため, 併設された資料館を見学しました.

『華岡青洲』先生が全国に2,250人あまりの弟子を育てたこと, 乳癌手術のみならず, 骨折や脱臼といった整形外科領域にも及ぶ臨床教育を行っていたことを知り, 深い感銘を受けました.
展示されていた当時の手術器具は現代のものと驚くほど似ており, 医術の根幹が変わらぬことを改めて感じました.

残念ながら撮影禁止でしたので, 目に焼け付けました.

『春林軒』の解説.

10時の開館と同時に春林軒へ.

漫画家『村上もとか』先生のサイン入り色紙.

受付にはマンガ『侠医冬馬』の作者『村上もとか』先生のサイン色紙が飾られており, 医史の世界と現代文化が交差しているのを感じました.

医学を教授していた内塾.
薬局.
手術室.
清潔を考えて, 板の間にしていたそうです.
病室.
居間.
自分の奥様で麻酔薬の治験をしているシーンが再現されていました.
客間.

内部には, 弟子を教えた内塾, 薬局, 手術室, 病室, 居間, 蔵, 厩が精巧に保存されており, 板張りの手術室は当時から清潔を意識していたことが伺えました.

谷瀬の吊り橋

熊野へ向かう途中, 奈良県十津川村の『谷瀬の吊り橋』に立ち寄りました.
12時前に到着すると, 村営の駐車場は満車に近い状態.
しかし, 回転が速くて, 間もなく停められました.

谷瀬の吊り橋.

観光客が多く, 吊り橋のたもとでは渡るのをためらう人の姿も.
とはいえ, 駐車料金800円を払っている手前, 覚悟を決めて渡ることにしました. 1回乗れるのは, 20人までという制限がありましたが, 橋のたもとでは特に人数をカウントして制限している様子はありませんでした.

吊り橋の通路は, 金網の上に板が渡してありました.

橋の床は金網に板が渡されており, 足元から風が吹き抜けます.
途中, 風が強く吹いて揺れる度に柵につかまり, 真ん中で引き返そうかと後悔しかけましたが, 妻は平然と前進.
結局, 297mを渡り切りました.
往復で15分程度でしたが, 肝が冷えました.

玉置神社

十津川村を抜け, 熊野古道の奥に鎮まる『玉置神社』へ.
道は細く, ガードレールもなく, 時に崖が迫る難路.
それでも到着すると, 駐車場は満車で臨時駐車場に案内されました.

玉置神社の鳥居.
空いていました.
玉置神社の参道.
玉置神社の本殿.
玉置神社の本殿.

参道は昨晩の雨でぬかるみ, 足元が滑る.
それでも辿り着いた本殿は、歴史の重みを感じる静謐な佇まいでした。

樹齢3,000年の神代杉.

境内の奥には樹齢3,000年を超える「神代杉」.
その幹に触れたとき, 時間の流れが一瞬止まったような感覚に包まれました.

ランチ

『道の駅奧熊野古道ほんぐう』の入り口.

14時過ぎに山を下り, 『道の駅奧熊野古道 ほんぐう』で遅い昼食を取る予定でしたが, 到着は15時前.
レストランはすでに閉店しており, 売店で購入した『めはりずし』を車内でいただきました.
シンプルながら塩味が利いた味に, 山道の疲れが癒えました.

熊野本宮大社

続いて5分ほどで『熊野本宮大社』へ.
駐車場がみあたらず, 行ったり来たりしてしまいましたが, すぐ隣の土産物店『樹の里』さんの駐車場が無料開放中だったので, こちらに駐車しました.

熊野本宮大社の鳥居.
熊野本宮大社の参道.
新しい神社のためか, 参道は予想外に短かったです.
熊野本宮大社のお社.

15時過ぎのせいか, 参拝客は少なく, ゆっくりとお参りできました.

境内の八咫ポスト

八咫烏をモチーフにした黒い「八咫ポスト」が印象的でした.

大斎原

さらに徒歩で旧社地「大斎原(おおゆのはら)」へ.
ここは, 明治期の大雨で『熊野那智大社』が水害に遭うまでの間, 『熊野本宮大社』があった場所です.

『大斎原』の大鳥居.

田園の中に立つ大鳥居は圧倒的な存在感で、古の信仰の重みを感じました。

かつての『熊野本宮大社』があった場所は, 芝生の更地と小さな祠だけになっていました.

今は芝生の更地となった旧社地の祠で静かに手を合わせました.

湯の峰温泉のあづまや違い

旅館あづまやさんの入り口.

今夜の宿は, 熊野詣の湯治場として知られる『湯の峰温泉』.
予約していた『旅館あづまや』さんの駐車場に到着したものの, 間違えて『民宿あづまや荘』さんの方に入ってしまい, 名前を告げたところ予約が入っていないといわれて, 一瞬血の気が引きました.
その後移動した『旅館あづまや』の玄関前で自分の名を見つけ、ようやく安堵しました。

日本最古の温泉

『湯の峰温泉』は, 日本最古の温泉といわれ, 平安時代から天皇家や貴族が旅の疲れを癒してきた湯.

湯の峰温泉公衆浴場と受付.

世界で唯一入浴が可能な世界遺産『つぼ湯』は, 30分交代制での入浴.
15時過ぎに宿の向かいにある受付を訪れたものの, 本日の受付は終了していました.
翌朝の早起きを誓い, 宿の湯へ向かいました.

旅館あづまや

館内の浴場は天井が高く, 湯気が静かに漂う昔ながらの造り.
他の宿泊客もおらず, 湯面に反射する灯りを眺めながら, 時を忘れて浸かりました。

『旅館あづまや』さんの夕食.

夕食は18時半から.
個室で供された懐石料理は, どれも丁寧な味わい.

日本酒『熊野三山』の冷酒.

熊野三山詣の締めくくりに, 地元熊野川の伏流水で醸されたお酒『熊野三山』の吟醸冷酒をいただきました.
深みのある香りとすっきりした余韻が, 旅の疲れをやさしくほどいてくれました.

¥2,530 (2025/09/20 20:32時点 | Amazon調べ)

食後, 翌朝のつぼ湯に備えて, 9時過ぎには床に就きました.

コメント

タイトルとURLをコピーしました