手術日+551日目 2025/9/1(月)(急速進行性変形性股関節症)

午前の病院での仕事と急速進行性変形性股関節症の患者

朝は, 26 ℃くらいで, 涼しさを感じるようになりましたが, 日中はまだまだ暑くなりそうで, 今日の最高予想気温は, 35 ℃超と予報されていました.

8時前に病棟に上がって, 敗血症性ショックで治療中の患者さんの状態を確認しました. 心拍数は120回/分くらいで, 熱はありませんでしたが, 尿がほとんど出ていませんでした.

8時から後輩医師と一緒に朝の病棟回診を行いました. 新型コロナ感染症の患者さんは, 2人のままで, 病院の中で拡大する傾向は今のところありません.

8時半に講堂に集まって, 朝礼を行った後, 患部ミーティングを行いました. 引き続き, 新型コロナ感染症が拡がらないように注意を払うように申し合わせました.

9時前に外来に降りて, 21人の患者さんの診療を行いました. 途中で, 当院に変形性股関節症で通院中の超高齢の患者さんが, 痛くて歩けなくなったので, 診てもらいたいと受診されました. 杖をついて, やっと歩いている状態でした.

急速進行性変形性股関節症の事例の股関節X線写真経過.
股関節の痛みが始まったときのX線写真(a)の後, 3ヶ月後(b), 6ヶ月後(c)のX線写真でに, 大腿骨頭がどんどん壊れていくのが認められます.

引用元:Furelos LAM. Rapidly progressive qsteoarthritis of the hip: A prospective study. J Clin Med. 2024. 13.

股関節のX線写真を撮像したところ, 5カ月前に比べて, 大腿骨頭が潰れていて, 急速に変形が進んでいることが判りました. 急速進行性変形性股関節症Rapidly Progressive Osteoarthritis of the Hip(RPOH)(以前は, 急速破壊型股関節症Rapidly Destructive Coxopathy(RDC)と呼ばれていました)と診断しました. PROHは, 高齢(多くは85歳以上)の女性に発生する, 急激に進む変形性股関節症の一病型です. 変形性股関節症の5 %程度を占めると報告されています. 診断は, 1年以内に股関節の軟骨の厚みが2 mm以上減ることをもって行われます. 痛みが強くて, 歩けなくなるために, 多くの場合, 人工股関節置換術が必要となります.

これまでにオピオイドという麻薬様薬物であるトラマールを処方していましたが, 痛みが強くなっているので人工股関節置換術での治療を勧めました.

肋骨骨折に肺挫傷, 外傷性気胸, 皮下気腫を合併した急患

11時過ぎに救急隊から仕事中に2 mの高所から転落してから背中を痛がっている中高年患者さんの収容依頼がありました. 外来の予約患者さんの診療はほぼ終わっていたので, 受け入れ可能と返答しました.

到着した患者さんは, 右上の横になっていました. 圧すと, 右鎖骨と右肋骨を痛がりました. 血液中の酸素飽和度が87 %前後(基準値は, 96 %以上)と低下しており, 息苦しさを訴えていました. 鎖骨骨折と肋骨骨折に合併した肺の損傷を疑いました. 直ちに点滴を始めて, 鎮痛薬ソセゴンを注射したところ, 痛みが緩和して, 呼吸が楽になり, 酸素飽和度も95 %程度に改善しました. 胸のCTを撮像するようにオーダーしました.

肋骨骨折に気胸と皮下気腫を合併した事例のCT.
右側の水平断では, 肺が胸(胸郭)の中で縮んでしまって, 肺と肋骨の間に黒く写る空気が溜まっています.
また, 胸郭から漏れた空気が皮下脂肪の中に溜まっています.

引用元:Zatovkaňuková P. The potential dangers of whooping cough: a case of rib fracture and pneumothorax. BMC Infect Dis. 2024. 24.

撮像されたCTを確認したところ, 鎖骨が中央で骨折している他に, 肋骨が4本骨折していました. さらに, 骨折した肋骨の下の肺が傷ついて, 出血している肺挫傷と肺から漏れた空気が皮膚の下に溜まる皮下気腫を合併していました.

外科の医師に連絡して, 入院させるかどうかの判断をしてもらうように, 引き継ぎました.

13時半に自分の部屋に戻ってランチを摂りました.

胸部外傷の患者さんは, これまでに大動脈瘤と大腸癌で手術をされたことがあり, さらに肝臓に癌が転移しているために, 当地から40 kmほど離れた他市の病院で抗がん剤治療中でした. かかりつけの病院の外科に入院治療を打診しましたが, 胸部外科がないため診療できないと断られました. その後, 地元の胸部外科のある別の病院で受け入れてもらえることになり, 16時過ぎに救急車で出発しました.

午後の病院での仕事と看取り

午前中の外来の合間に, 敗血症性ショックで治療中の超高齢の患者さんのご親族の方が来院されたので, 病状を説明しました. 検査の結果, 腎臓の機能が低下しており, 尿が出なくなっているので, 一両日中に亡くなる可能性が高いことを告げました. すると, ご親族の方から, 今やっている治療は全て中止して, 自然に亡くなるのを看取りたいという要望をいただきました.

患者さんは, 元大学病院の看護師さんでした. ご親族の方も医療介護に勤務されており, 延命治療は希望しないというご意志でした. 治療を中断すると, 数時間程度で亡くなると思われますと改めて説明しましたが, やはり中止してもらいたいというご要望でしたので, 点滴や昇圧薬, 抗菌薬などの薬は全て中止しました.

16時過ぎに, 患者さんの呼吸が停止したと病棟から連絡があり, すぐに心臓も停止したと続けて連絡がありました. 病室を訪問して, 死亡確認しました.

ご親族の方は, 家に帰ってしまっていたので, お迎えに来ていただくように連絡しました.

肋骨骨折の急患

外来で診療中の超高齢患者さんが自宅で転倒してから腰痛のため動けなくなったという電話が16時前に来ました. これから診察してもらえないかということだったので, すぐに救急車で来院するようにと指示しました.

16時半前に救急車が到着しました. 背骨や腰の骨を圧しても痛いところはなく, 念のために腰椎のMRIを撮像しましたが, 骨折はありませんでした. 動けないので, 入院してもらうかと考えて, 入院前検査として胸部X線写真を撮像したところ, 肋骨が3本折れているのが判りました. 肋骨の先端付近だったので, 体をゆっくり動かせば強い痛みは出ないと判断し, 起きてもらったところ, 起き上がれました.

骨折があることを説明して, 入院して経過を見るか, 帰宅するかを聞いたところ, 帰宅するというので, 鎮痛薬を処方して, 帰宅してもらいました.

17時半を過ぎたので, 夕方の病棟回診は, 後輩にしてもらうことにしました.

待ちぼうけ

先ほど亡くなった患者さんの葬儀会社のお迎えが19時半になると電話が来たので, 死亡診断書を記入した後, 自分の部屋で待機することにしました.

19時20分に霊安室に向かいました, しかし, 灯りが点いておらず, 真っ暗で, 鍵もかかっていました. 病棟に電話したところ, 予定よりも1時間早くお迎えの車が到着したので, 18時半にお帰りになりましたといわれました. 「19時半だと言われたから, ずっと帰らずに待っていたのに. なんで電話くれなかったの」という言葉が出かかりましたが, 夜勤の看護師さんを責めてもしかたがないので, 飲み込みました.

19時半過ぎに病院を出ました. 外は, 空気がまだ暑く, クルマの外気温モニターでは31 ℃ありました.

韓国ドラマ

帰宅後, 20時過ぎに夕食を摂りました.

ほうれんそうの不備で, 待ちぼうけをくらって, 遅くなったことを家人に説明して, 報告と連絡は確実に行うことの重要性を説きました.

夜は, ネトフリで韓国のテレビドラマ『いつかは賢いレジデント生活』の第10話を見ました. ついに『賢い医師生活』の主人公2人がカメオ出演したので, 盛り上がりました.

それにしても, 産科危機的出血のシーンは, リアルでした.

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