手術日+491日目 2025/7/3(木)(膝関節脱臼)

午前の病院での仕事と大腿骨頚部骨折の急患

今朝も青空が広がって, 暑くなりそうな朝でした.

通常通りに出勤しました

8時前に病棟に上がって, 昨日後輩医師が執刀した手術3件(膝関節前十字靭帯断裂に対する関節鏡下前十字靭帯形成術, 変形性膝関節症に対する脛骨近位骨切り術後の骨内異物(プレートとスクリュー)除去術, 大腿骨頚部骨折に対する骨折観血的手術)の患者さんの経過を確認しました. みなさん問題なく経過されていました.

8時から後輩医師と一緒に朝の病棟回診を行いました.

8時半に外来に降りて, 午前中は34人の患者さんの診療を行いました. 後輩医師の整形外科クリニックからバネ指(狭窄性腱鞘炎)の中高年の患者さんが紹介されてこられました. これまでにケナコルトという炎症を鎮める合成副腎皮質ホルモン薬を3回注射されていましたが, 指の引っかかりが続いているということで, 手術を希望されました. 今日の午後に急遽手術を行うことにしました.

11時前に先輩医師の整形外科クリニックから電話が来ました. 2日前にロードバイクで立ちゴケ(停まった状態で, パタリと横に倒れること. ロードバイク用の靴は, スキーと同じようにビンディングという金具で自転車のペダルに固定されるため, 停まったときに靴をペダルから上手く外せないと自転車ごと倒れます)した後, 股関節部の痛みが続いていて, 今日になってクリニックに何とか歩いてこられたそうです.

X線写真を撮ったところ, 自分が受傷したような非転位型の大腿骨頚部骨折だったので, 手術目的に紹介したいという連絡でした. これから受診しに来ていただくように伝えました. その後, 民間救急車に乗って来るので, 到着は13時頃という連絡が入りました.

午後の病院での仕事

12時半から午後に日帰りの手術を行う患者さんに麻酔と手術内容についての説明を行いました.

その後, 到着された大腿骨頚部骨折の患者さんの診療を行いました. ストレッチャーに寝ていらっしゃいましたが, 骨折した方の股関節を自分で動かせる状態でした. 手術前の検査のオーダーを電子カルテに入力しました. 持病に糖尿病があるとのことで, 糖尿病のコントロール状態を確認してから手術を行う予定です.

13時半から午前中受診されたバネ指の患者さんに麻酔と手術の内容について説明を行いました.

14時になったので, 午後の外来が始まりました. 昼休みは取れませんでした. 幸い, 予約の患者さん2人だけだったので, 30分で終了しました.

14時半に日帰り手術の執刀のため, 手術部に移動しました. 指に生じた件滑膜巨細胞腫という滑膜由来の良性腫瘍を摘出する手術でした. 予定通り20分ほどで終了しました.

引き続きバネ指の患者さんの腱鞘切開術を行いました. 指が引っ掛からなくなったことを確認しました.

15時に外来に戻って, 病理診断申込書を記入して, 15時半にやっと自分の部屋に戻ってランチを摂りました.

16時に外来に戻って, 当科の外来に通院中の高齢の患者さんが, 膝関節が急に腫れて痛くなったというので来ていただいて診療しました. 膝関節に液体が貯まって腫れている状態だったので, 注射器で針を刺して, 内容液を吸い出す処置を行いました. 吸引した関節液は, 黄色く透明だったので, 変形性膝関節症による関節液の貯留と判断して, ステロイド薬であるデキサートを注入しました.

16時半になったので, 病棟に上がって後輩医師と一緒に夕方の病棟回診を行いました. 回診中に病棟勤務の看護師さんから, 「義父をよろしくお願いします」と声を掛けられました. 「?」と首をかしげたところ, 先ほど入院された大腿骨頚部骨折の高齢の患者さんが, 看護師さんの義父だったと聞かされました. 入院患者さんは71人, 自分が主治医となっているのは31人となりました.

残業と膝関節前方脱臼の急患

17時前に自分の部屋に戻って, 帰ろうとしていたところ, 電話が鳴って, 他の病院の整形外科から脚立を降りている最中に転落して膝関節を脱臼した中高年の患者さんを紹介したいという連絡が入りましたと病診連携室の担当者から告げられました.

今晩は, 当院が整形外科の救急輪番担当でした. 来ていただくように伝えたところ, 夜勤を行っていただく大学の整形外科の後輩医師がまだ到着していないという電話が夜勤の看護師さんから入りました.

しかたがないので, 自分が診療することにしました.

『アルケア株式会社』さんの膝関節装具『ニーブレース』

17時過ぎに救急車で患者さんが運ばれてきました. 膝の痛みのために, うんうんと唸っている状態でした. 膝関節の安静のために『アルケア株式会社』さんの『ニーブレース』という膝装具を装着されていました. 足関節やつま先を動かせるかどうか, 触った感じが判るどうかを確認して, 神経障害がないと判断しました.

足背動脈(Dorsal pedis artery)の位置を示す写真.
赤いマーカーが引いてある足の甲の親指側にあるのが足背動脈です。

引用元:Gomez-Sanchez CM. Case planning and execution of inframalleolar bypass for chronic limb-threatening ischemia. J Vasc Surg Cases Innov Tech. 2023. 9.

さらに, つま先の爪の下の色がピンク色(爪下血行が良好)かどうか, 足の甲の動脈(足背動脈そくはいどうみゃく)の拍動が触れるかどうかも確認して, 血液循環障害がないと判断しました.

膝関節前方脱臼のX線写真.
側面像(A)では, 脛骨が大腿骨の前方に脱臼しています.

引用元:Pawelke J. Low impact injury resulting in a Schenck type IV classified anterior kneedislocation as well as biceps femoris rupture: A Case Report. J Orthop Case Rep. 2024. 14.

持参されたCD-Rの中の画像を確認したところ, X線写真はなく, CTしか入っていませんでした. CTを見ると, 脛骨が大腿骨の前方に重なるように完全にずれてしまっていて, 確かに膝関節の脱臼でした. よく見ると脛骨の膝関節部分の内側(内顆ないか)にヒビが入ってはいましたが, それ以外の骨折はありませんでした. 整形外科医になって35年以上のキャリアの中で, 骨折をほぼ合併していない膝関節脱臼を診るのは初めてだったので, ちょっと感動しました.

それにしてもなぜ脱臼を元の位置に戻した(整復した)後のX線写真がCD-Rに入っていないのかといぶかしんだところで, あれ?もしかしてと気付きました.

急いで患者さんのニーブレースを外してみると, 予想通りに膝関節は脱臼したままでした. 患者さんが痛がって, 唸っていた理由が判りました. 普通の整形外科医であれば, 脱臼している関節を見たら, X線写真を撮って脱臼を確認次第, 直ちに整復操作をするのが当然と考えていました. 紹介元の先輩医師は, 院長先生まで務められた方でしたが, ご高齢となり, アクティビティがかなり下がってしまったことを知ってはいましたが, 脱臼を放置したまま転医させるほど衰えてしまったのかと悲しくなりました.

すぐに足を引っ張って膝関節の脱臼を整復しました. 患者さんの痛みは直ちに緩和して, 楽になったとおっしゃっりました. 整復後のX線写真とCTを撮像して, 骨折していた脛骨が割れなかったか確認するのと同時に, MRIも撮像して脱臼に伴って切れた靱帯を調べることにしました.

幸い, X線写真, CTでは, 脛骨内顆部のヒビは拡大しておらず, 手術の必要がない程度でした. MRIの結果, 膝関節の4つの主要な靱帯の内, 内側と内部の靱帯(内側側副靱帯, 前十字靭帯, 後十字靭帯)は切れていました. また, 内側の半月板にもキズがついていました.

患者さんとそのご家族に検査の結果を説明して, 後日切れた靱帯を再建する手術が必要になることを告げて, 入院していただくことにしました.

19時過ぎに大学の後輩医師が病院に到着したので, さらに救急車が2台とウォークインの2人がこれから救急外来に来る予定となっていましたが, あとはお願いしました.

学会出張の準備

再来週は, 奈良県奈良市で学会があります.

奈良に行くのは, 高校2年生の修学旅行以来なので, 45年ぶりになります.

今年も学会前日の夜に学会長の先生が主催される晩餐会に出席するので, 学会前日の昼前に出発の予定です. 学会長の先生とは, 以前, ある大学で招待講演の演者として呼ばれたときに一緒にお酒を飲んでからお友達になっています.

奈良のどこで何を食べるのか, いろいろと検索して, レストランに予約を入れました.

また, 趣味の招き猫, ネコの置物を買うために, どこのお店に行くか探しました.

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