手術日+406日目 2025/4/9(水)

午前の病院での仕事と乳癌大腿骨骨転移の患者

今日は曇り空でしたが, 気温は高めで, 11 ℃でした.

家の前の桜並木の桜は, ほぼ満開となっていました.

8時前に病棟に上がって, 昨日後輩医師によって変形性膝関節症に対して脛骨近位骨切り術と関節鏡での半月板縫合術という手術が行われた2人の患者さんの経過を確認しました. 麻酔科の先生が, 全身麻酔に坐骨神経ブロックという麻酔を併用されていたので, 痛みがなかったとおっしゃっていて, お二人とも問題なく経過されていました.

後輩医師と一緒に朝の病棟回診を行いました.

8時半に外来に降りて, 21人の患者さんの診療を行いました.

他の病院から, ふとももの骨(大腿骨)の腫瘍が疑われる中高年の患者さんが紹介されて受診されました. 9年前に乳癌の手術を受けた既往があり, 現在も乳腺外科でレトロゾールという閉経後乳癌の治療薬を処方されて内服中でした.

昨年の秋頃からふとももの痛みが出現したため, 近くの整形外科クリニックを受診したところ, 腰椎椎間板ヘルニアと診断されて, 鎮痛薬等を投薬されました. 痛みが続いているため, 今年の3月にふともものX線写真が撮像されて, 異常が認められたために, 紹介元の病院に紹介されました. その病院で, CTとMRIが撮像された後, 良性の骨腫瘍が疑われて, 当科に紹介されました.

乳癌が大腿骨に転移した事例のX線写真.
大腿骨の股関節に近い部分(転子下てんしかと近位骨幹部)の中が黒く透けるよう溶けています(A).
骨強度が低下して骨折するのを予防するために骨の中に髄内釘という金属製の棒状の器具を差し込む手術が行われました(B).

引用元:Samsani SR. Breast cancer bone metastasis in femur: surgical considerations and reconstruction with Long Gamma Nail. Eur J Surg Oncol. 2004. 30.

持参されたX線写真を見たところ, 大腿骨の股関節に近い部分(転子部)からその下(近位骨幹部)にかけて, 骨が透けるように黒く写る骨破壊を認め, 乳癌の骨転移と診断しました. 患者さんは, 体重をかけると痛い状態だったので, 骨折する危険性があると判断して, できるだけ体重をかけないように指導しました.

できるだけ早く, かかりつけの乳腺外科を受診して, 他の臓器(脳, 肺, 肝臓など)に転移がないかどうか検査してもらうように, 紹介状を作成しました. また, 骨破壊の進行を停める目的で, ゾレドロン酸ランマークという骨修飾薬を使う準備として, これらの薬の副作用である顎骨壊死(がっこつえし:口の中が不衛生な状態や歯茎の化膿や炎症があるとそこからあごの骨が溶ける状態)を予防するために, 歯科を受診して, 顎骨壊死のリスクの評価と抜歯が必要な歯があれば, 抜いてもらうようにと説明して, かかりつけの歯科に紹介状を書きました.

骨破壊が進んだり, 骨折した場合には, 手術が必要となるので(上図B参照), 骨修飾薬の投与や骨折予防あるいは骨折後の手術を当科で行うのかどうか, かかりつけの乳腺外科医と相談してくるように話しました.

この患者さんの対応で, 小一時間かかってしまいました. 紹介元の後輩整形外科医には, 癌の既往がある患者さんの骨破壊を診た場合には, 癌骨転移を強く疑って, 速やかに検査を行うと共に, 癌の治療を行っている主診療科の担当医にすぐに連絡をとるようにとお返事を書きました.

12時半で外来診療を終えました. 引き続き, 来週予定している手術の患者さんのカンファランスのためのスライド作成を行いました. 来週は, 5件の手術を予定しています. 年度始めのせいか, 少なめです.

13時半に自分の部屋に戻ってランチを摂りました.

午後の病院での仕事

14時から日曜日に入院された骨盤骨折の患者さんのご家族と面談の約束があったので, 病棟に上がりました.

骨盤骨折の状態, 今後の見込み, 骨粗鬆症の診断と治療, 顎骨壊死予防のための歯科受診と予防的抜歯について説明しました.

引用元: Rommens PM, Hofmann A. Comprehensive classification of fragility fractures of the pelvic ring: Recommendations for surgical treatment. Injury 2013. 44.

骨盤骨折の状態は, Rommens分類のType IIBだったので, 手術は行わずに, 安静を保って, 痛みが引き次第, 立ったり, 歩いたりするリハビリを行う予定です.

午後は, 病棟の書類作成, 診断書記入, 指示出しなどの仕事を行いました.

16時半から後輩医師と一緒に夕方の病棟回診を行いました. 入院患者さんは87人, 自分が主治医となっているのは48人でした.

17時過ぎに病院を出ました. 病院の敷地の桜は, 5分咲きでした.

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