朝の業務
この日も普段どおり出勤し, 8時から病棟回診を行いました. 前日に自分が執刀した患者の術後経過は良好で, 安堵を覚えました.
9時から実習に来ている医学部学生に向けて, スライドを用いたオリエンテーションと講義を担当. 医学生の真剣な眼差しに, 自分が患者の立場であることを忘れ, 一時的に日常へ引き戻される感覚がありました.
骨接合器械の選択
外来へ向かうと、後輩医師がテーブルに大腿骨頚部骨折用の内固定器械のカタログを10種類ほど並べて待っていました。
「先生、明日の手術器械、どれにしますか?」
自分の身体であるがゆえに、選択は極めて現実的です。
- 外側突出の少ない器械 → 皮下脂肪が薄いため、後に違和感や疼痛をきたす可能性を避けたい。
- 最新のエビデンス → キャニュレイテッドスクリューやハンソンピンは合併症(短縮・骨頭壊死)のリスクが高いと報告されている。
結果、Depuy Synthes社 Femoral Neck System(FNS) を選択しました。
FNSは伸縮ロッドとアンチローテーションスクリュー、小型プレートとロッキングスクリューから構成され、安定性と低侵襲性を両立するシステムです。
講義後に外来に行くと, 後輩医師が, 「明日の手術器械はどうしますか?これから選んでください」とテーブルに大腿骨頚部骨折の内固定材料のカタログを10種類くらい並べて待っていました.
「自分は, お尻の外側の皮下脂肪が薄いので, なるべく出っ張りが少ない器械で, あと, 近年の研究を調べたところ, キャニュレイテッドスクリューやハンソンピン(ハンソン・イノベーション社)は, 合併症(頚部の短縮や大腿骨頭壊死)が多いので, シンセス(Depuy Synthes社Femoral Neck System(FNS))か, ホヤ(HOYA社 HTS Twins2)か, ホムズ(HOMS社 TL2Sロックスクリューシステム)でお願いします」と答えたところ, 「じゃ, 一番出っ張りが少ないシンセスにします」ということで, FNSを使うことになりました.

FNSは伸縮ロッドとアンチローテーションスクリュー, 小型プレートとロッキングスクリューから構成され, 安定性と低侵襲性を両立する器械です.
麻酔の選択
外来で予約の患者さんを25人診察しました. 顔なじみの患者さんから デスク脇に置いてある松葉杖や, 片脚で診察台に移動しているのに気付かれ, 「あら, 先生, どうしたの?」と聞かれたので, 「右脚を骨折しちゃって」と正直に答えました.
診療の合間に麻酔科から電話が来ました
「先生、麻酔はどうしますか?」
「おまかせします. 説明は不要です. 」
「じゃ, 全身麻酔と神経ブロックでやります. 」
麻酔方法が決まりました.
これまで硬膜外麻酔の経験はありましたが, 全身麻酔は初めて. 未知の体験への不安はあったものの, それ以上に「どうなるのか」という医学的な好奇心が勝りました。
ランチ後, 14時から外来で5人の診療をしました.
16時半から夕方の病棟回診をしました. 整形外科の入院患者さんは75人, 自分が主治医となっているのは24人でした.
ほぼ定時で帰宅しました.
手術前夜
19時からオンラインで医師会理事会に参加. 終了後, 21時過ぎに低残渣食として妻に頼んでいた月見うどんを夕食に摂りました. 手術前後の排便を避けるための, いわば「消化器対策」です.
入浴を済ませて, 入院に備えて下着や洗面道具をバッグに詰めて, 翌日に備えて早めに床につきました. 患者として, そして整形外科医として迎える手術前夜は, 緊張と冷静さが入り混じる独特の時間でした.
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