ビタミンDの種類
(日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書, 厚労省)
- ビタミンDには, 側鎖構造の差異によりD2からD7まで6種類あります.
- D4〜D7は食品にはほとんど含まれていなくて, 活性も低くなっています.
- 生理活性が高いのは, D2(エルゴカルシフェロール)とD3(カルシフェロール)の2つになります.
- D2, D3の分子量はほぼ等しく, 体内で同様に代謝されます.
- D3の方が, D2より効力が大きいという報告がありますが, 両者の換算は困難なので, 両者を併せてビタミンDとして扱われます.
ビタミンDの供給源
(日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書, 厚労省)
- ヒトを含む哺乳動物の皮膚には, コレステロールの生合成過程の中間体としてプロビタミンD3(7-デヒドロコレステロール, プロカルシフェロール)が存在しており, 日光の紫外線が皮膚に当たるとプレビタミンD3(プレカルシフェロール)となり, さらに体温による熱異性化によってビタミンD3(カルシフェロール)が生成されます.
- 皮膚600 cm2(顔面+両手の甲の面積に相当)で, 5.5 μgのビタミンD3を産生するのに必要な日照曝露時間(晴天時)は下表1のとおりです.
- 上表のとおり日照暴露によるビタミンD3の生成は, 緯度と季節による影響が大きく, 冬期の北日本では日光暴露によって必要なビタミンD3を確保することはほぼ不可能です.
- また, ビタミンD2とビタミンD3は食品から摂取されます. D2はきのこ類, D3は魚類に多く含まれます.
食品中のビタミンDの量
ビタミンDは, きのこ類, 魚類, 卵に多く含まれます. スーパーマーケット等で日常的に購入しやすいビタミンDを多く含む食品中のビタミンDの量は, 以下のとおりです.
きのこ類(可食部100gあたり) | ビタミンD(μg) |
きくらげ/ゆで | 8.8 |
舞茸/ゆで | 5.9 |
舞茸/油炒め | 7.7 |
エリンギ/焼き | 3.1 |
エリンギ/油炒め | 1.4 |
乾しいたけ/ゆで | 1.4 |
生しいたけ/ゆで | 0.4 |
ぶなしめじ/ゆで | 0.9 |
ぶなしめじ/油炒め | 0.5 |
えのきたけ/ゆで | 0.8 |
えのきたけ/味付け瓶詰め | 0.1 |
しいたけ ぶなしめじ, えのきたけでは, ビタミンDは少なめです.
魚類(可食部100gあたり) | ビタミンD(μg) |
しらす干し/半乾燥 | 61 |
しらす干し/微乾燥 | 21 |
しらす干し/釜揚げ | 4.2 |
たたみいわし | 55 |
身欠きニシン | 51 |
白鮭(秋鮭)/焼き | 39 |
紅鮭/焼き | 38 |
銀鮭/焼き | 21 |
大西洋鮭(アトランティックサーモン)/焼き | 21 |
さんま/みりん干し | 20 |
さんま/焼き | 13 |
うなぎ/蒲焼き | 19 |
まがれい/煮 | 17 |
まあじ/焼き | 12 |
まあじ/開き干し/焼き | 2.9 |
まだい/生 | 7 |
ぶり/焼き | 5.4 |
まさば/焼き | 4.9 |
クロマグロ養殖/生 | 4 |
ほっけ/開き干し/焼き | 3.5 |
ひらめ/生 | 3 |
卵 | ビタミンD(μg) |
鶏卵/全卵/炒り | 4.7 |
鶏卵/全卵/目玉焼き | 3.9 |
鶏卵/全卵/生 | 3.8 |
鶏卵/全卵/ゆで | 2.5 |
ビタミンDの食事摂取基準
(日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書, 厚労省)
- 骨折のリスクを上昇させないビタミンDの必要量に基づいて, 成人で一定の栄養状態を維持するのに十分な食事からの摂取量(目安量)は, 日照によって皮膚で1日に5 μg程度のビタミンDが産生されると想定し, 1日8.5 μgとされています.
- 一方, 多量のビタミンD摂取を続けると, 高カルシウム血症, 腎障害, 軟組織の石灰化障害などが起こることが知られています. そのため, ビタミンDの過剰摂取による健康障害を未然に防ぐ量(耐用上限量)も設定されており, 成人では1日100 μgとされています.
ビタミンDの代謝と作用
(日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書, 厚労省)
津川. 日本人のビタミン D 不足・欠乏の実態 骨および種々の疾患リスクとの関連. 化学と生物 2021,59.
- 食事で摂取または皮膚で生成されたビタミンDは, 肝臓で25-ヒドロキシビタミンD(25OHD)に代謝されて, 続いて腎臓で活性型である1α, 25-ジヒドロキシビタミンD (1,25(OH)2D)に代謝されます.
- 1,25(OH)2Dは, 標的細胞の核内に存在するビタミンD受容体と結合し, ビタミンD依存性たんぱく質の遺伝子発現を誘導します.
- ビタミンDの主作用は, ビタミンD依存性たんぱく質の働きを介して, 小腸や腎臓でカルシウムとリンの吸収を促進することです.
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