大腿骨頚部骨折のGarden分類を提唱したイギリスの整形外科医であるGarden先生(Robert Symon Garden, 1910-1982)は, 1971年に大腿骨頚部骨折の単純X線写真の画像所見を元に, 大腿骨頚部骨折後の整復位の異常とlate segmental collapse(遅発性大腿骨頭圧潰)の発生率との関連を研究した論文(Garden RS. Malreduction and avascular necrosis in subcapital fractures of the femur. J Bone Joint Surg. 1971. 53-B.)を発表されました.
股関節の単純X線写真正面像において, 大腿骨頭の内部から, 大腿骨頭と骨盤とで股関節を形成する部分(寛骨臼かんこつきゅう)のうち, 体重を支える部分(臼蓋きゅうがい)の内部へとまたがる骨梁(主圧縮骨梁)の走行と大腿骨の長く真っ直ぐ伸びた部分(骨幹部)の内側縁を通る線分の延長線とがなす角度は, 正常では160°であることを記載されました(下記FIG. 6). また, 股関節の単純X線写真側面像において, 大腿骨頭の中心線と頚部の中心線は一直線であり, そのなす角度は180°であることを記載されています(下図 FIG. 7).
上記の股関節X線正面像の大腿骨頭と大腿骨骨幹部のなす角度/股関節X線側面像の大腿骨頭中心線と大腿骨頚部中心線のなす角度を, 160/180と記述し, これを大腿骨頚部の「alignment index」(日本語に訳すと, 整列指標)と名付けました. これは, 後にGarden alignment indexと呼ばれるようになります.
過去15年間に骨折後の経過を観察した大腿骨頚部骨折500人のうち, 骨がつながって治った323人(上表TABLE 1のUnited)の患者さんのalignment indexを計測して, late segmental collapseとの関連を調査しました.
Alignment indexは, 200/180から130/175まで広範囲に及び, late segmental collapseは69人に発生していました(上記TABLE II).
その結果, alignment indexが160/180(正常)だった57人では, 骨頭圧潰は発生せず, 0人でした. Alignment indexが両方とも155-180以内だった242人では, 骨頭圧潰は16人(6.6 %)に発生したのに対して, alignment indexのどちらかかが155以下または180以上だった81人では, 53人(65.4 % )と高率に骨頭圧潰を生じていました. また, 股関節正面像単独のalignment indexが150以下または185以上だった26例では, 26人全員(100%)で骨頭圧潰を生じたことが分かりました(上記TABLE III).
以上の結果より, alignment indexは, late segmental collapseを予測しうる指標として有用でした. そして, late segmental collapseを回避しうるalignment indexの許容範囲は狭く, alignment indexが160/180となるように大腿骨頭の転位を整復することが重要であることを説かれました.
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