午前の病院での仕事と腰椎椎間板ヘルニアの急患
今朝は薄曇りでしたが, やはり気温は高く, 朝から25 ℃ありました. 最高気温は30 ℃を超えて, 午後には, ところにより雨が降るかもと言う予報でした.
8時前に病棟に上がって, 8時から後輩医師と一緒に朝の病棟回診を行いました.
8時半からカンファランスがあり, 来週予定している手術7件について検討しました.
9時前に外来に降りて, 23人の患者さんの診療を行いました. 10時前に腰痛と脚に力が入らないために歩けないという高齢の患者さんの受け入れ要請が救急隊から来たので, 受け入れることにしました.
10時半過ぎに救急車で到着した患者さんを診察しました. 3日前に重い物を運んで, 昨日草むしりをしてから腰痛が出現したとのことでしたので, 当初は腰椎圧迫骨折や筋肉痛かと考えましたが, 腰には圧しても痛みはありませんでした. 右脚に力が入らず, 膝を立てることができなくて, 足首は上げ下げできない状態でした. すねから下は, 感覚がなく, 触っても判らない状態で, 右脚の神経麻痺が認められました.
先月, 他の病院で前立腺癌と診断されており, 来月大学病院の泌尿器科に紹介される予定と聞いて, 前立腺癌が腰椎や骨盤に転移して, それによって右脚が麻痺しているのではと考えて, 腰椎と骨盤のX線写真とCTを撮像するようにオーダーしました.
撮像されたX線写真とCTには, 腰椎の加齢による変形以外に異常は認めなかったため, 腰椎のMRIを追加でオーダーしました.

矢状断(A)では, 第2/3腰椎椎間板が後方に突出しているのが認められます.
水平断(B)では, 左側の椎間関節部に突出したヘルニアの塊が認められます.
腰椎MRIの結果, 第2/3腰椎に椎間板ヘルニアがあり, それによって脊髄神経が通っている硬膜管が圧排されていました. 腰椎椎間板ヘルニアによる右脚の単麻痺と診断しました. 急速に右下肢に強い麻痺が出ているため, 手術が必要と判断して, 脊椎外科専門医のいる病院に受け入れの要請を行うように病診連携室の担当者に連絡しました.
紹介状を作成した後, 13時前に自分の部屋に戻ってランチを摂りました.
第2/3腰椎椎間板ヘルニアによる下垂足

第3腰神経障害では, 第4腰神経障害(上記L4)とほぼ同様の神経障害を生じます.
神経痛としては, 主にふともも前方の痛み(Pain), 筋力低下としては, 大腿四頭筋の筋力低下(Mmotor weakness)が出ます.
引用元:Deyo RA. Herniated lumbar intervertebral disk. New Eng J Med. 2016. 374.
通常, 腰椎椎間板ヘルニアでは, その位置(高位)にある神経の炎症を生じることによって, 神経障害性の脚の痛み(神経痛)が出ます. 第2/3腰椎椎間板ヘルニアでは, 第3腰神経が障害されて, ふとももの前方に痛みが出ます(上図L4のPain). また, 第3腰神経が支配する筋肉である腸腰筋や大腿四頭筋などの股関節を曲げたり, 膝を伸ばす筋力が低下します. 第5腰神経が支配する足関節やつま先を伸ばす筋肉(前脛骨筋, 足趾の伸筋)や第1仙椎神経が支配する足関節やつま先を曲げる筋肉(下腿三頭筋, 足趾の屈筋)の筋力低下は出現しません. 救急患者さんのように痛みがなく, 第5腰神経や第1仙椎神経領域の麻痺だけが出現する事例は珍しいと考えて, 同様の事例があるかどうか, 検索してみました.

第2/3腰椎椎間板ヘルニア(上記2/3)単独で下垂足を生じた事例はなく, 他の高位にも椎間板ヘルニアがあるmultiple(複数)でした.
引用元:Aono H. Surgical outcome of drop foot caused by degenerative lumbar diseases. Spine 2007. 32.
足関節を伸ばす(持ち上げる)ことができない麻痺(下垂足かすいそく drop foot)を生じた46人の腰椎椎間板ヘルニアの高位を調査した大阪大学整形外科の青野先生の研究論文では, 第3/4, 第4/5腰椎椎間板ヘルニア, 第5腰椎/第1仙椎椎間板ヘルニア, 第5腰椎/第6腰椎(移行椎といって, 第1仙椎が仙骨として癒合してないため, 見かけ上, 6番目の腰椎があるように見える状態)椎間板ヘルニアでは, 単独で下垂足を生じた事例があるものの, 第2/3腰椎椎間板ヘルニア単独では下垂足を生じた事例はありませんでした.
また, 第2/3腰椎椎間板ヘルニアで, 第5腰神経根障害を生じたという報告は, これまでに2件(Hidalgo-Ovejero AM. L5 root compression resulting from an L2-L3 disc herniation. Am J Orthop (Belle Mead NJ). 2003. 32., Stein AA. Report of an isolated L5 radiculopathy caused by an L2-3 disc herniation and review of the literature. Cureus 2017. 10.)しかありませんでした. 第2/3腰椎椎間板ヘルニアで第5腰神経と第1仙椎神経領域の神経障害を生じるという事例は, おそらくは世界初くらいのきわめてまれなことが判りました.
2つの病院から受け入れを断られたとの電話が病診連携室の担当者から来たので, 大学病院に当たってみてと返事しました.
午後の病院での仕事
13時半から今日も大腿骨頚部骨折に対する人工骨頭挿入術があったので, 手術部に移動しました.
14時前から後輩医師の執刀で手術が始まり, 予定通り40分ほどで手術を終えました.
病診連携室の担当者に電話したところ, 大学病院に連絡して, お返事待ちとのことでした.
15時前に病棟に上がって, 入院サマリーを記入したり, 紹介状を作成したりの仕事を行いました.
16時から病棟看護師, リハビリスタッフ, 管理栄養士, 社会福祉士と一緒に病棟回診を行いました.
17時前に, 病診連携室に電話しましたが, 大学病院からのお返事待ちとのことでした. 大学病院で今日受け入れられないときは, 当院に入院してもらって, 明日以降に転院を待機してもらうことにしますと告げました.
17時から製薬会社の方と面談の約束があったので, 自分の部屋に戻って, オンラインで薬の説明を受けました.
その後, 病診連携室から電話が来ないので, 自分の部屋で待機していましたが, 眠くなって眠ってしまい, 起きたら19時過ぎでした. 着信の履歴を見ましたが, 病診連携室から電話はなく, 腰椎椎間板ヘルニアの患者さんがどうなったのか心配になって, 病診連携室と救急外来を見に行きましたが, どちらも灯りが点いておらず, 電子カルテを見ても, 転送したとの記録がありませんでした.
おそらく大学病院に転送したのだろうと判断して, 20時前に帰宅しました. それにしてもなんで連絡をよこさなかったのかと怒りを通り越して, 呆れました.
金曜ロードショー
遅くなったので, トレーニングができず, 夕食後は金曜ロードショーでまた『ミッション・インポッシブル/デッドレコニング』を見ました.
先月見た『ミッション・インポッシブル/ファイナル・レコニング』がまた見たくなりました.
次週が『ルパン三世 カリオストロの城』と知って, チンクエチェント繋がりなの?と突っ込みました. ちなみに, なぜルパン三世がフィアット500に乗っているのかは, こちらの記事をご覧下さい.
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