手術日+447日目 2025/5/20(火)(骨盤悪性骨腫瘍)

午前の病院での仕事と骨盤悪性骨腫瘍の患者

今朝も曇り空でした. 室内が暗かったので, リビングの電灯を点けて朝食をいただきました.

8時前に病棟に上がって, 昨日大腿骨人工骨頭挿入術が行われた患者さん2人の経過を確認しました. お一人は, 気持ち悪くて, 戻しそうとのことでしたので, 吐き気を抑えるためにグラニセトロンという薬を注射するようにオーダーを入れました. もうお一方は元気に過ごされたいました.

8時から後輩医師と一緒に朝の病棟回診を行いました.

8時半からカンファランスがあったので, 講堂に移動しました. 今日は, 管理栄養士による食物アレルギーとその対策でした. 現在, 病院食を提供している入院患者さんのうち, 1割に相当する患者さんに食物アレルギーがあり, アレルギーの元(アレルゲン)となる食材を除いた病院食を作っていることを初めて知りました.

9時前に外来に降りて, 午前中は28人の患者さんの診療を行いました. 今日は, 3人の新規の患者さんが紹介されて受診されました.

骨盤を構成する骨のイラスト.
恥骨は, 赤で示された骨です.
左右の恥骨は下腹部前方で恥骨結合(Pubic symphysis)という軟骨でつながっています.

引用元:Monstafa AMHAM. An overview of the key principles and guidelines in the management of pelvic fractures. J Perioper Pract. 2021.31.

そのうちのお1人は, 1月から脚の付け根の痛みがあったので, 一昨日先輩医師の整形外科クリニックを受診された中高年の患者さんでした. X線写真が撮像された結果, 骨盤の前方にある骨(恥骨)(上図参照)に異常が認められたため, 当科に紹介されました.

持参されたX線写真を見たところ, 恥骨が溶けて壊れているのと, その内部に骨が白くなって硬くなっている, あるいはカルシウム成分が濃くなっている(石灰化している)所見が認められました. 骨の悪性腫瘍が疑われる所見でした. 今日中に一通りの検査を行うことにして, 血液検査, CT, MRIをオーダーしました.

恥骨に発生した骨腫瘍31例をまとめた論文によると, およそ半数弱の12例は悪性骨腫瘍であったという報告があります(Öztürk R. Management and retrospective analysis of pelvic ramus tumors and tumor-like lesions: Evaluation with 31 cases. Jt Dis Relat Surg. 2020.31.). このため, 恥骨の骨腫瘍を診た場合には, 悪性骨腫瘍であることを念頭に, 早急に検査を進める必要があります.

12時過ぎに検査の結果がそろったので確認したところ, 血液中のアルカリフォスファターゼという酵素タンパク質が高値を示していました. この酵素は, 骨に含まれているので, 骨が破壊された際に, それに応じて新しい骨を造ろうとする生体内の反応で増えている可能性と, 骨の腫瘍そのものがこの酵素を産生している可能性の両方があります. 特にアルカリフォスファターゼを産生する骨腫瘍は, 骨肉腫という悪性の骨腫瘍です.

右恥骨の線維性骨異形成の事例のX線写真.
右の恥骨がふくらんで大きくなっています.

引用元:Eisenberg RL. Bubbly Lesions of Bone. AJR Am J Roentgenol. 2009. 193.

CTを見ると, 恥骨の一部がふくらむように大きくなっていました. 硬い骨がふくらむことは短期間には起こりえないので, かなり以前(数年以上前)から骨の中に非常にゆっくりと大きくなる良性骨腫瘍が存在していて, それが骨をふくらませていたところに, 一部が悪性腫瘍に変化した(がん化)したため, 骨が溶けて壊れている状態を疑いました. CTの所見からは, 線維性骨異形成という腫瘍類似疾患と判断しました.

恥骨の骨肉腫の事例のMRI前額断.
恥骨を破壊した腫瘍が骨の外に出て, 前下方の筋肉の中に進展しています.

引用元:Hu X. Effect of cisplatin arterial infusion (CAI) on primary nonmetastatic pelvic osteosarcoma: A preliminary study. Cancer Manag Res. 2021. 13.

また, MRIを見ると, 恥骨内の病変が骨を破壊して, 周囲の筋肉に進展していたので, 骨肉腫という悪性骨腫瘍が強く疑われました.

さらに検査と診断確定のために骨の一部を採取する生検が必要でしたが, それらは専門施設である大学病院で行っていただくように, 来週の外来予約を取得して, 紹介状を作成しました.

患者さんには, 骨から発生したがんが疑われ, 至急検査が必要なので, 来週必ず大学病院を受診するように説明しました.

13時過ぎに自分の部屋に戻ってランチを摂りました.

午後の病院での仕事と超高齢の腰痛患者

14時に外来に戻って, 6人の患者さんの診療を行いました.

一昨日から左の脇腹から腰の辺りに痛みがある超高齢の患者さんが受診されました. 歩いて診察室に入ってこられて, ベッドに上がったり, ベッドの上でうつ伏せから仰向けに体勢を変えたりできるので, 普通の腰痛ではないようだと考えました.

腰痛があると言って受診される高齢患者さんの中には, 腸管穿孔の腹膜炎だったり, 胆石症や胆管炎だったり, 膵癌だったりしたことを経験していたので, 腰椎のX線写真の他に腹部のCTも撮像するようにオーダーしました.

腰椎のX線写真では, 骨折はなく, 年相応の変形だけでした. 腹部CTでは, 内臓や骨盤の中に痛みを生じるような異常を認めませんでした. さらに念のため, 血液検査と尿検査を行って, 何らかの病変や尿管結石を見逃さないようにすることにしました.

検査結果が出たのが16時過ぎでした. 結局, 血液検査には異常はなく, 尿検査でも尿管結石に認められる血尿がなかったので, 腰痛の原因は特定できませんでした. 鎮痛薬を処方して, 痛みが続くときには内科も受診するように説明しました.

16時半過ぎに病棟に上がって, 後輩医師と一緒に夕方の病棟回診を行いました. 今日は, 後輩医師の執刀で, 午前中に膝関節半月板損傷の患者さんの関節鏡下半月板縫合術が, 午後には変形性膝関節症の患者さんの人工膝関節全置換術がありました. 手術後の患者さんたちの血圧や脈拍などは落ち着いていました. 入院患者さんは80人, 自分が主治医となっているのは37人に減りました.

明日から東京で開催される学会に出張するので, 18時過ぎまで病棟の仕事を片付けました.

外に出ると, 地面が濡れていて, 雨が降ったことを知りました. 空を見ると, 雲は切れて, 青空が少し見えました.

真夏

帰宅後, エアロバイクを漕いで, 入浴しました.

当地は, 曇りのちにわか雨の影響で, 前日より5 ℃近く気温が低く, 過ごしやすかったのですが, テレビを見ていると, 東京は30 ℃を超えて真夏日になったとのことでした.

明日は, さらに気温が上がって, 全国的に真夏の暑さになるとの予報でした. 東京の最高気温も29 ℃と予想されていました.

このため, 学会には夏用のスーツを持っていくことにしました. 暑すぎるときは, スーツは着ないでシャツだけで行く予定です.

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