アメリカ国立衛生研究所(Nationa Institute of Health, 略名 NIH)が2000年に開催したコンセンサス会議後に発表した声明(National Institute of Health Consensus Development Conference Statement, Osteoporosis Prevention, Diagnosis, and Therapy, March 27-29, 2000)において, 『Osteoporosi is defined as a skeletal disorder characterised by compromised bone strength predisposing to an increased risk of fracture(骨粗鬆症は, 骨折の危険性が高まる, 骨強度の低下を特徴とする骨格疾患と定義される)』と記載されており, この定義が世界的に用いられています.
つまり, 骨粗鬆症は, 単なる骨の老化(歳を取って骨が弱くなったの)ではなく, 様々な原因で骨の強度が低下したことによって骨折し易くなった病気であるということです.
日本では, 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 が編集して2015年に出版した『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版』において, 骨粗鬆症は, 『骨強度の低下を特徴とし, 骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患』であると記載されています.
骨粗鬆症には, 『原発性骨粗鬆症』と『続発性骨粗鬆症』の2種類があります.
『原発性骨粗鬆症』とは, 女性においては, 閉経に伴って女性ホルモンが急激に減少することによって, 骨の量の減少と骨の内部の微細な構造の劣化を生じる結果, 骨の強さが低下する『閉経後骨粗鬆』であり, 男性においては, 加齢に伴って新しく骨を造る能力の低下などによって骨の強さが低下する『男性骨粗鬆症』になります. 一般に『骨粗鬆症』という場合は, 多くはこの『原発性骨粗鬆症』を指します.
『続発性骨粗鬆症』とは, 遺伝的な素因, 閉経, 加齢, 生活習慣等の原因以外に骨の強さが低下しうる特定の原因が認められる場合になります.
『続発性骨粗鬆症』の原因としては, ホルモンの異常を生じる病気によるもの(内分泌性), 糖尿病などの生活習慣病によるもの, 栄養の不足によるもの(栄養性), 薬物の摂取によるもの(薬剤性), 寝たきりやギプス固定などの安静を保ったため, 骨に対する刺激が減ったことによるもの(不動性), 生まれつきのもの(先天性)などがあります(『続発性骨粗鬆症』については, 改めて記事を書きます).
原発性骨粗鬆症の診断には, 日本骨代謝学会が2012年に発表した『原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)』が用いられています.
また, 続発性骨粗鬆症の診断基準も, 原発性骨粗鬆症の診断基準が適用されます.
この診断基準の付記として, 『骨量減少(骨減少)』とは, 『骨密度が-2.5 SDより大きく-1.0 SD未満の場合』と記載されています.
さて, この診断基準に沿って, 私が骨粗鬆症かどうかを診断すると, 大腿骨頚部骨折という大腿骨近位部骨折があるので, 診断基準の『I. 脆弱性骨折あり』の『1. 大腿骨近位部骨折あり』に該当しそうですが, 私が骨折した原因は, スキーでスピードを出して滑っていての転倒でしたので, 『軽微な外力』ではなかったことから, 『脆弱性骨折あり』には該当しないことになります.
したがって, 『II. 脆弱性骨折なし』に該当し, 骨密度で診断することになります.
骨密度測定の結果, 腰椎の骨密度は, 若い人と比較した値が87 %, -1.1 SDだったので, 骨粗鬆症の診断基準となる70 %, -2.5 SDより多いことから, 腰椎の骨密度では, 骨粗鬆症ではなく, 『骨量減少(骨密度が-1.0 SD未満)』に該当します.
同様に, 大腿骨頚部の骨密度は, 若い人と比較した値が87%, -1.1SDだったので, 大腿骨頚部の骨密度も『骨量減少(-骨密度が1.0 SD未満)』に該当します.
以上より, 私の骨密度測定の結果の診断は, 『骨量減少』でした.
一般的な50歳代の医者よりもスポーツ活動はしてきたつもりだったので, 自分の骨密度が同年代の平均値より下だったというだという検査結果を見たときには, 大腿骨頚部骨折が判明した時以上に衝撃を受けました.
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