手術日+287日目 2024/12/11(水)

午前の病院での仕事と肩関節脱臼骨折の患者

5時過ぎに妻がリビングにやってきて, 炬燵で寝ていた自分の頭の下に枕代わりにクッションを挿ししれてくくれました. お腹を空かせたネコに起こされたとのことでした.

そのまままた炬燵で寝直して, 7時前に起きました.

今週の土日は, 蔵王温泉スキー場の宿を予約していましたが, 現在滑れるのが中央ゲレンデだけなので, キャンセルしました.

朝食後, 出勤しました. 今朝は青空が広がっていました. 今日も気温は低く, 3 ℃でした.

病棟に上がって, 昨日手術された2人の患者さんの経過を確認しました. お二人とも痛みも軽く, 朝食を召し上がっていました.

8時から後輩医師と一緒に朝の病棟回診を行いました. 昨日入院した尾骨骨折の患者さんも, ベッド上に起き上がって, 朝食を摂っていられました.

8時半に外来に降りて, 28人の患者さんの診療を行いました. 診療中に, 全身痛の後期高齢者の患者さんの救急車を受け入れ可能かどうか, 救急隊から連絡があり, 受け入れ可能と返答しました.

その他に, 昨日の朝家の中で転倒してから肩と腕が痛いという後期高齢者の患者さんが受診されました. 肩を触れると, 肩関節部分に骨が触れず, 肩関節の脱臼と判断しました.

肩関節の解剖イラスト.
肩関節の脱臼骨折のX線写真. Aは陥没型, Bは剥離型, Cは分離型.

引用元:Su F. Management of greater tuberosity fracture dislocations of the shoulder. JSES Rev Rep Tech. 2024. 4.

X線写真を撮像したところ, 腕の骨の肩関節部分(上腕骨頭じょうわんこっとう)が肩甲骨の肩関節部分(関節窩かんせつか)の前方下方に外れていて, さらに上腕骨頭の外側(大結節だいけっせつ)がめり込むように骨折(陥没骨折かんぼつこっせつ)していました(上図A参照).

肩関節の脱臼骨折と診断しました. 脱臼してから24時間以上はずれたままだったので, 元の位置に戻りにくいことが予想されましたが, まずは麻酔をかけないで, 腕を頭側に挙げて引っ張って脱臼を戻す(整復)操作を行ったところ, 高齢者で筋肉が少ないことが幸いして, 整復することができました.

腕を胸に密着させて, 動かないように固定した後, 帰っていただこうとしましたが, 独り暮らしで, 腕が使えないと生活できないとのことでしたので, 入院していただくことになりました.

全身痛の急患

そうこうしているうちに, 全身が痛いという後期高齢者の患者さんが救急車で運ばれて来られました.

高度の難聴で, こちらの呼びかけが全く聞こえないので, 問診はあきらめました. 付き添ってこられたご家族から話を聞いたところ, 1カ月位前から首や肩の痛みが出たため, 骨粗鬆症の治療を受けている整形外科クリニックを11月下旬に受診したところ, X線写真では異常を指摘されず, ノイロトロピンという鎮痛薬を処方されていました. その後, 腕やふとももの痛みが出てきたため, 先週も受診されましたが, 同じ薬を処方されていました.

昨日から全身の痛みがひどくなって, 動けなくなったため, 家人が患者さんをクルマに乗せて, 消防署に乗り付けて, そこから救急車に乗って, 当院に搬送されました.

痛みのためにストレッチャーの上から起き上がることができませんでしたが, 首は曲げ伸ばしすることができました. 首の後ろや肩や背中を圧すと, すべて痛いと訴えるため, 痛みがある部位の特定はできませんでした. 両方の二の腕とふとももを圧すと痛みを訴えましたが, 肘から前腕と膝からすねは圧しても痛みがないようでしたので, 『リウマチ性多発筋痛症』と診断しました.

『リウマチ性多発筋痛症』は, 頚部, 肩, 腰部, 大腿など四肢近位部の痛みやこわばりを生じる原因不明の炎症性疾患です. 男女比は1:2で, 50歳以上の中高年女性に多く発症します. 副腎皮質ステロイド薬が有効です.

念のため, 頚椎, 胸椎, 腰椎, 骨盤のX線写真とMRIを撮像しましたが, すべて異常はありませんでした. 血液検査の結果, 炎症反応が異常に高値を示しており, 『リウマチ性多発筋痛症』と確定しました.

検査の結果, 脱水もあったので, 入院していただいて輸液とリメタゾンという関節リウマチ治療薬を注射する治療を行うことにしました.

横紋筋融解症が危惧される急患

さらに大学病院の救急科から電話がありました.

今朝自宅でクルマに乗り込もうとしたところで転んでしまって, クルマとブロックとの間に体をはさまれた状態でいたところを近所の人に発見されて, 救急搬送された後期高齢者の患者さんでした. 検査の結果, 骨折はなく, はさまれた胸とふとももの痛みのために, 立てないので, 当院で引き受けてもらえないかということでした. 以前から脚の脱力感があって, その診療も一緒にしてもらいたいという依頼でした. 検査の結果, クレアチンキナーゼという筋肉に含まれている酵素が1,000 U/L(基準値は, 概ね40〜300 U/mLくらい)と異常に増えているので, 『横紋筋融解症』を生じないかどうかの経過観察も必要とのことでした.

13時に救急車が到着して, 同乗してきた大学病院救急科の研修医から病状を聞いて, 引き継ぎました.

入院の指示や入院後の輸液などの指示を電子カルテに入力して, 14時までかかりました.

14時過ぎに自分の部屋に戻って, ランチを摂りました.

部屋で休んでいると, 『横紋筋融解症』の発症が危惧される患者さんの血液検査の結果, 検査部から「クレアチンキナーゼが2,200台に増加していて, パニック値です」という電話がかかってきました.

パニック値』とは, 「生命が危ぶまれるほど危険な状態にあることを示唆する異常値で直ちに治療を開始すれば救命しうるが,その診断は臨床的な診察だけでは困難で検査によってのみ可能である」とされています. クレアチンキナーゼでは 1,000 U/mL以上がパニック値になっています.

横紋筋融解症では, 血液中に流出した大量の筋肉の成分によって, 急性腎不全を引き起こすことがあるので, 尿の量を正確に測るために, 尿道カテーテルを挿入することにしました. さらに輸液を増やして, 明日以降も血液検査を繰り返し行うようにオーダーを追加入力しました.

16時半から後輩医師と一緒に夕方の病棟回診を行いました. 入院患者さんは86人, 自分が主治医となっているのは45人まで増えました.

リウマチ性多発筋痛症の患者さんは, 注射したリメタゾンが劇的に効いて, 痛みがなくなっていました. 腕やふとももを圧しても痛がりません. リウマチ性多発筋痛症は, 副腎皮質ステロイド薬が魔法のように非常に良く効くのが特徴です. この患者さんは, 糖尿病で治療中でした. 明日から プレドニゾロンという副腎皮質ステロイド薬を内服してもらって, 症状をコントロールすることにしましたが, プレドニゾロンには血糖が上がる副作用があるので, 定時で血糖を測定することにしました.

17時半過ぎに病院を出ました. 雪がちらちらと降っていて, 道路にはうっすらと積もり始めていました.

入院患者数の最多記録

主治医となっている患者さんが45人と大分増えましたが, これまでのところ当院で主治医として受け持った患者さんの最多記録は58人です. この時の後輩医師の受け持ちが30人だったので, 整形外科だけで88人も入院していたことがあります. 休む暇なく働かなければならず, 大変でした.

救急車の収容や転院の要請があった患者さんをお断りすることなく, すべて受け入れていたので, こんなに増えてしまいましたが, 目が行き届かないところがあったり, カルテを書くだけで毎日1〜2時間かかったりしたので, それ以後は, 多くても40人は超えないようにしたいと病診連携室の担当者に伝えました.

しかし, ここ数ヶ月の病院の収支悪化から, そんなことも言っていられなくなりました. ベッドが空いているのであれば, 患者さんを積極的に受け入れることにしました.

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